【統計初心者向け】MMRMを徹底解説!
欠損データがあっても大丈夫?
臨床試験のデータ解析でよく耳にする「MMRM」。統計の専門用語で難しそう…と思っていませんか?この記事では、統計初心者の方にもMMRMの基本から応用までをわかりやすく解説します。
MMRMとは?
MMRMは「Mixed Model Repeated Measures」の略で、日本語では「混合モデル反復測定」と訳されます。特に、同じ患者さんから複数回測定されたデータ(例えば、投薬前と投薬後、1週間後、2週間後…といった時系列データ)を解析する際によく用いられる統計手法です。
MMRMの大きな特徴は、データに欠損がある場合でも、統計的に適切な解析ができる点にあります。臨床試験では、様々な理由で途中で試験を中止したり、来院できなくなったりして、全ての測定時点のデータが揃わないことがよくあります。このような「欠損データ」がある場合に、そのデータをうまく扱えるのがMMRMの強みです。
MMRMを用いる目的
MMRMを用いる主な目的は、以下のような課題を解決することです。
- 経時的な変化を評価する: 薬の投与によって症状がどのように変化していくか、治療の効果が時間とともにどう推移するかなどを調べたい場合に役立ちます。
- 群間の比較を行う: 新しい治療法と既存の治療法、またはプラセボ(偽薬)との間で、経時的な効果に差があるかを比較したい場合に用いられます。
- 欠損データがある状況で、より正確な推定を行う: 上述したように、データの一部が欠損していても、残りのデータから最も確からしい情報を引き出し、バイアス(偏り)の少ない結果を得ることを目指します。
MMRMがおすすめな状況
MMRMは特に以下のような状況でその真価を発揮します。
- 臨床試験: 新薬開発のための治験などで、患者さんの状態を複数回測定し、薬の効果を評価する際に頻繁に用いられます。
- 縦断研究: 長期間にわたって同じ対象者を追跡し、特定の要因が時間経過とともにどのように影響するかを調べる研究。
- 心理学や教育学の分野: 被験者の能力や状態の変化を複数回測定し、介入の効果などを検証する場面。
要するに、同じ対象者から複数回データを取得し、かつ途中でデータが欠損する可能性のある研究に非常に適しています。
MMRMは具体的に何をしているのか?
MMRMは、「混合モデル」と呼ばれる統計モデルの一種です。この「混合」とは、固定効果(Fixed Effects)と変量効果(Random Effects)という2種類の効果を同時に考慮できることを意味します。
- 固定効果: 治療法や測定時点など、研究者が知りたい主要な効果を指します。例えば、「この薬はプラセボと比べて効果があるか?」「治療開始から1ヶ月後に効果はどれくらい変化したか?」といった問いに対する答えに関わる部分です。
- 変量効果: 個々の患者さんの違いなど、予測できないバラつきを指します。同じ治療を受けても、人によって効果の出方には個人差がありますよね。MMRMは、このような個人間のバラつきをモデルに組み込むことで、より正確な解析を可能にします。
MMRMは、欠損データがあっても、その患者さんから得られた他の時点のデータや、他の患者さんのデータから、欠損している時点の値を「推測」して解析に組み込むことで、よりロバスト(頑健)な結果を得ることを目指します。ただし、実際にデータを埋めているわけではなく、あくまで統計モデル上で欠損データを考慮した推定を行っている、と理解してください。
MMRMと似ている方法の似ている点・違う点
MMRM以外にも、反復測定データを解析する方法はいくつかあります。代表的なものとMMRMとの違いを見てみましょう。
| 比較項目 | MMRM | 繰り返し測定分散分析(Repeated Measures ANOVA) | 共分散分析(ANCOVA) |
|---|---|---|---|
| 欠損データの扱い | ◎ 統計的に適切に扱える | × 欠損データがあると解析できないことが多い | △ 一部の欠損に対応可 |
| データの構造 | 個人間のバラつきを考慮できる | 個人間のバラつきを単純に扱ってしまうことがある | 基準時点の値を調整 |
| 柔軟性 | 高い(様々な複雑な状況に対応できる) | 低い(特定の仮定を満たす必要がある) | 中程度 |
| 解析結果 | より正確でバイアスの少ない結果が得られやすい | 欠損があると偏った結果になる可能性 | 基準時点の効果を除く |
繰り返し測定分散分析(Repeated Measures ANOVA)は、最も基本的な反復測定データ解析手法ですが、データに欠損があると解析が非常に困難になるという大きな弱点があります。また、個人間のバラつきをうまく扱えない場合もあります。
共分散分析(ANCOVA)は、治療前の値(ベースライン値)を考慮して治療効果を評価する手法です。しかし、複数時点の経時的な変化を評価するのには向いていません。
MMRMは、これらの手法の欠点を補い、欠損データがある状況でも、より洗練された方法でデータの全体像を捉えることができるため、臨床試験などで標準的に用いられるようになっています。
たとえによってMMRMを理解する
MMRMを「探偵」に例えてみましょう。
あなたは探偵で、ある事件(臨床試験)の犯人(治療効果)を突き止めようとしています。何人かの容疑者(患者さん)から何度か聞き込み(測定)をしました。
繰り返し測定分散分析の探偵は、もし容疑者が途中で行方不明(データ欠損)になったら、「この容疑者はもう調べるのをやめよう」と、その容疑者の情報全てを捨ててしまいます。これでは、大事な手がかりを見逃してしまうかもしれません。
MMRMの探偵は違います。もし途中で容疑者が行方不明になっても、「この容疑者は以前こんな証言をしていたな」「他の容疑者はこんな行動をとっていたから、この容疑者もきっと…」と、残された情報や他の容疑者の情報から、行方不明になった容疑者の行動を推測し、全体像を把握しようとします。
このように、MMRMは、欠損データがあっても「あきらめない」ことで、より多くの情報から真実(治療効果)を導き出そうとする、賢い探偵のようなものなのです。
まとめ
MMRMは、臨床試験などで頻繁に用いられる強力な統計解析手法です。特に、以下のような場合にその力を発揮します。
- 同じ対象者から複数回測定されたデータがある
- データに欠損がある可能性がある
- 経時的な変化や群間の比較を行いたい
統計初心者の方にとっては少し複雑に感じるかもしれませんが、MMRMは欠損データという臨床試験で避けられない課題に対して、非常に信頼性の高い解決策を提供してくれる、頼れるツールだと理解していただければ幸いです。